![]() とったら、家屋調査士だけで楽して仕事がしたい。」とは土地家屋調査士が寄れば必ず話題に なる。だが本当に、簡単で責任が無いと済ましてよいのだろうか。 土地家屋調査士と、家屋の肩書きがつくのであるが、家屋についての知識はそれほど無く、登 記をする為の知識しかなく、古い建物については、いろいろ調査を行い、土地家屋調査士の面 目を保つ事もあるのだが、新築の場合は建物の形状や外周の測量以外では、建築確認通知 書の記載に頼る事が多く、土地と違い、土地家屋調査士が独自にいろいろな調査を行う事は 少ないようである。 ●建築確認通知書って何。 建築に際し、提出した建築確認申請書に記載した事柄が建築基準法に定められた内容(規 制)に合致している事を確認しましたよという特定行政庁から建築主への通知書。 この建築確認通知書についての各種の変更については、最初の建築確認通知書に押印した 申請人の同一の認め印で申請する事が要求され、同一の印が不明の場合は実印と印鑑証明 書が要求される。 そのため、登記の時点での建築確認通知書の変更は、登記申請の添付資料に申請人の上 申書または理由書をつける形で変更される場合が多い。 ●検査済証って何。 建築完了検査を行い、建築確認申請とおり建築基準法を尊守して建物が建築されている事を 証する書面。 更に、検査済証がおりていれば、行政庁との手がきれているという事で、建築確認通知書の 記載事項の各種の変更は出来ない事になっている。 ●建物の所在について 建物の登記をした時、建物の所在を土地の境界から測り、それにより建物の位置の特定を行 い、建物図面を作成し、法務局に永久に残され、ひとたび境界紛争が始まると、弁護士は境界 を示す証拠として建物図面を持ち出してくる。 また、建築確認通知書のなかの丈量図に隣接境界線とあるが、本当の境界線なのか。 境界の確認をする時。自分の居宅は建築確認を申請し、許可になった建物であるから、境界 から50cmは必ず離なさないと建物が建たないないはずであり、当然、境界については建物か ら50cm以上はなれているはずであると主張される方さえいる。 果たして建築確認通知書にある、隣接境界線からの距離は正しいのか。現地での建築業者 の建物の施工の際の位置決めはどうするのか。 建物を建てる場合、建築確認通知書がおりると現地で、建築主、設計者、施工業者立会のも と地面に縄を張り(縄張)、建物の外郭を表して建物の位置決めを行う。 ここで、建物の位置が最終的に決まるのである。建築確認通知書に記載していた最初の予定 位置から10〜30センチ程度変わるのは日常茶飯事であり、比較的広い敷地の場合などは、 この程度で納まらない事もある。数m単位で動く場合も有り得るのである。 建築確認通知書に記載された境界線からの距離は単に絵であると認識していたほうが我々土 地家屋調査士にとっては無難である。 もし、建築確認通知書にしめされた境界を信じて、建物の所在を決定し、建物図面を作成して しまえば、後は法律の専門家である弁護士さん達から、土地の境界について、その建物図面 を裁判の証拠資料として提出され、挙げ句は頼まれてもいない土地の境界について証言をし なくてはならなくなる。 土地家屋調査士はやはり自分の仕事に忠実に境界を調査し、そこからの距離をとる事により 建物の位置決めをおこなうべきという事である。 また、建物の位置決めは上述の通りであるので、所在地番についても建築確認通知書に記載 された所在地番通りとは限らないのは言うまでもないことである。 ●所有権証明書として、果たして全面的に信用出来るか。 建物の登記を行う際に、新築の建物であれば、建築確認通知書や審査設計書さらに検査済 証があり、不動産登記取り扱い要領によれば、当然のようにそれが所有権の証明書の絶対的 な位置付けとなっている。 建築確認通知書と検査済証そして申請人の住民票さえあれば、建物の表示登記は出来るの だが、果たして現実にどの程度信用性があるのだろうか。 ●名義人 また建築主は果たして正確に記載されているか。建築士はどのようにして建築主を決めている のか。建築主自身の住民票、印鑑証明書等でその意志を確認しているのだろうか。土地家屋 調査士が、建物表示登記の依頼人に、「この建物の登記名義人はこの建築確認通知書どおり でよろしいですか。」と尋ねると、「あれ、二人でって建築士さんには言っておいたのに。」とか、 「いや、違います。」と齟齬する事もしばしば。建築確認通知書を良く見ている方は少ない。 それでは、建築設計事務所は、どのようにして建築主を決めるのか、公庫融資を受ける場合 などは別として。 『私が建築主よ。』 『はい、そうですか。』 『私が建築するんよ。何か文句ある?』 『いいえ・・・。』 同様に登記所と建築確認通知書の関係についても、官庁が審査・検査している書類であるとし て登記所は全面的に信頼し、建築確認通知書と検査済証と現地の建物の写真がついていれ ば、実地調査を省略するとしているが、公共用地の分筆買収のための嘱託登記の地積測量 図と同様の理屈であり、その建前と本音、そして実態が大きく相違する例であろう。 建築確認通知書と検査済証があるから、我々土地家屋調査士は登記申請が楽に出来るとい うもの、これ以上は言わない方が華・・・。 それでも、建築基準法は、建築確認通知書に記載された事項については、全て正しく記載され ている(ウソなどは書いていない。)という事を前提に審査・検査するのであり、真の所有者が 記載されているかどうかについては何ら考慮していない。 土地家屋調査士としては、依頼人から誰が本当の登記名義人なのか、よく事情を聞き取り。ト ラブルを避ける為、建築確認通知書、検査済証と共に引渡証明書(印鑑証明書付)を添付す るのが望ましいと考える。 ●建築士の作成した建物の敷地図、建築通知書にいう敷地って。 建築設計事務所の敷地調査については、地積測量図が資料として提出されれば、敷地は測 量図に基づき作成する。無ければ現地で建築主の指示した境界を測る。平板測量をするのが 普通であるが巻尺のみで敷地を測り求積を行ってしまう事務所もある。(既存建物から境界線 までの距離を測り敷地図面を作成してしまう等。) また、色々なトラブルが過去発生した経験上、最近は敷地調査を行うのが常識となっている が、それでも建物を建てるための敷地調査であり、境界を明確にするという目的の調査・測量 でない事からも隣接土地所有者の立会など殆ど行わない。 当然のように土地家屋調査士の言う境界とは大きく食い違っている場合が多々ある。こういっ た調子の建築確認通知書の敷地図どおりの区画割をしたとしても、土地家屋調査士が地積測 量図を作成すれば、当然のように面積は異なり、殆どの場合外郭の「隣接地境界線」なるもの の形状の相違に悩まされる事になる。 ●建物の形状・寸法、本当に建築確認通知書と合っているの。 実際に建物を測った場合、設計変更とか寸法の相違が多くみられるが、建築通知書には設計 変更がされていない、設計変更の申請はどう処理され、どの程度までが必要とされるのか。ま た、それでも検査済証は交付されるのか。 建築完了検査は、建築確認申請書に記載された内容につき検査を行うが、我々土地家屋調 査士が登記申請を提出するに際し注意すべき内容については一切チェックはなされないと考 えた方が良い。 検査員は、建物の各部のチェックをするような事は殆どといっていいほど行わない。建ぺい 率、容積率をクリアーしているかどうかのチェックの一方法として、確認申請書に記載された敷 地境界線からの距離を測って見て、間取りに変更がないかを確認する程度と考えて良い。 ふとどきな建築設計事務所は、経験上チェックされる内容を心得ており、建築確認申請時か ら、建築確認申請書と異なる建物を建築する事を頭に描いているような場合もある。 例えば、依頼者の要望で建築基準法に定められた容積率(敷地面積に対する建物の延べ床 面積の割合)を越える様な場合、間取りは変えないが寸法グリッドを変えて確認を通してしまう のである。 何の事かと疑問に思われるであろうが、実に簡単な事である。一間の寸法は一般的に1.81mと 考えられがちであるが、1.91mに化けるのである。6帖間だと前者の場合は約9.9u、後者で約 10.9uとなり1uの差が生じる事になる。 建物全体では何u増える事になるのだろうか?。 ●最終責任 土地家屋調査士が表示登記を行うにあたり、実際に外周を測定してみると、どうもこの手の形 状変更が多く、こういう場合に限って住宅金融公庫の融資の幅を越えてしまう事例が多くみら れ、依頼人に「融資がしてもらえ無くなる。」と泣き付かれ、やむなく、建築確認通知書記載のと おりの寸法で床面積を算出してしまい、後で土地家屋調査士の職責と虚偽の測量と測量誤差 について、思い悩み。 おまけに市町村の税務課の家屋調査担当者から「先日登記された家なんですが、当方が調査 しましたら、面積が相違するんですが。」という問い合わせもあろうと言うもの。 ●そう言えば そういえば、金融機関から依頼があり、住宅金融公庫の融資対象の建物。当然居宅。そのこ ろは120uが融資対象の上限の床面積であった。 現地に行ってみると、何と3階建の立派な建物。即座に「これは床面積は遥かに制限を越えて いる」と直感し、建物所有者が持っていた建築確認通知書で確認してみると、1階部分は高床 式で、側壁がつかず、不動産登記法上で外気分断性のない部分として、建物の床面積として 認定出来ない場所になっているのだが、現地はきっちりと壁が付き、倉庫として使用。 おまけに2、3階部分の合計で120uぎりぎりの面積なのだが、これも1.81mを1.98mに変更し ている。いくら心やさしき土地家屋調査士でも、建物所有者に 「これは、いくらなんでも、建築確認通知書のとおりという訳にはいきませんよ。」 「何故。建築士さんは、これで融資の方も大丈夫だと言っていたよ。」 「登記所の実地調査というのがありまして、登記所が確認にくるんですよ。これは見にくれば、 すぐ解りますから。どうしてもとおっしゃるんでしたら、他の土地家屋調査士さんか、建築確認 通知書のとおり登記が出来ると言われた、その建築士さんに頼んでみて下さい。」と登記所の 実地調査を理由に丁重にお断りした事があった。 ●敷地は作られる また、間取りも寸法も変えず容積率をクリアーするにはどうするか?。 この場合は敷地が広くなれば問題は無い、隣の土地を(分筆して)買い足す必要があるのだろ うか?。 いや、建築確認申請書に記載の敷地求積を単に広くして提出。 例えば、12m×14mの長方形の敷地面積は168uであるが、12.2m×14.2mの土地として求積 すると173.24uとなり5.24uの増となる。建ぺい率60%、容積率200%の用途地域であれば建 築面積で3.14u、延べ面積では10.48uのもうけとなる。我々土地家屋調査士が血眼になって いる土地の境界や、地積更正なんか、いとも簡単に変更されてしまう。目的が違えば登記簿の 面積や土地の境界は大した事ではないのかもしれない。 「家さえ建ちゃあええんよ。境界については土地家屋調査士がおろうがな。そっちに頼まんか い。」 審査する側は、建築確認申請時の確認申請書に記載された内容は全て正しい事項が記載さ れておりウソ八百など書かれていないものとして審査するのであるから目前の図面、書類に記 載されている内容が建築基準法に違反していない限り100%建築確認通知書はおりてくるの である。 確認申請は、提出する建築主、設計者は全くの善人であるとの前提で、審査されるのである。 絵に書いた餅?・・・。 「折角、監督官庁と良い関係にあるのに、要らぬ事を言って来る土地家屋調査士って何 様?。」 ●片棒 極、一部の設計事務所は、後先を考えずに建築確認を通すための図面を書き、後は野となれ 山となれ・・・。 検査を受けると通らないと思えば、建物が完成しても検査は受けない。 彼らはその建物は永遠に建築工事中の建物となるが、登記は出来る事を知っているのであ る。調査士さん後はよろしくごまかして・・・。(大部分の善良な建築設計事務所にとっては大変 迷惑な話である。極悪人の如く書いてしまって御免なさい。) そんな事情を知らない土地家屋調査士、「検査済証ないんですか。仕方ないですね。工事請負 人さんに工事完了証明に押印してもらいましょう。」あれあれ、土地家屋調査士は結局片棒を 担ぐ事に・・・。 そのうち、土地家屋調査士に全部責任が・・・。 「えっ、建築確認通知書が無いって。新築の家なのにおかしいですね。いくら探しても無い。そ れじゃあ仕方無いですね。成人二人による所有権証明書と工事請負人の工事完了証明でな んとかしましょう。」 かくして、土地家屋調査士がねじりはちまきで、現地の建物の実測数値と、融資のための限度 となる床面積をにらみながら、調整に明け暮れる。 ●屋根の種類なんて、どうでもいいじゃないの。 屋根の種類を間違ったら・・・。最近の建物の屋根。瓦葺?、それともスレート瓦葺?。最近い ろいろな種類が販売されており、周りから眺めるだけでは全く種類は解らない。 おまけに何とかして材質をみたいと思っても、現場の監督が最近は行き届いており、かけらさ え無い。依頼人に聞いても、あまり明確な答が無い。仕方なく建築確認通知書に記載されてい る屋根の記載をそのまま信用して登記申請書を作成する。 登記に関してはスレートだろうが瓦だろうが、屋根の記載なんかいらないんじゃないかといって いるくらいだから問題ないのだが、これがたまたま相違していれば、申請人にどんな災いが起 こるか。固定資産税算出に際し、使用材料により課税基準を定めているため、スレート葺を瓦 葺としたような時は、建物の評価が上がり固定資産税は高くなる。 ●屋根裏部屋に注意。 建築確認通知書・検査済証があっても、調査してみると2階建の2階の天井に天井収納階段 なるものが設置され階段を降ろして上がってみると、天井高1.5mを越える部屋が存在してい る事がある。何じゃこりゃ・・・。3階建じゃないか。くわばら!。くわばら!。最上階の天井は、 必ず確認しましょう。 外側から眺めても何やら不必要な所に窓があり、「おかしいな」と直感するのは土地家屋調査 士だけではなく、実地調査の登記官も同じ思い。 登記官、どうせだますなら上手にだませ。と無言の付箋が付く。 少人庁。登記官がかわる度に、取り扱いが相違し、「今度の登記官は〇〇ですから、」と取り 扱い要領も何のその。登記官の顔色ばかりを伺う事になり。
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